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コラム2026年10月6日

期をまたぐ取引の処理|前払・前受・棚卸・工事進行基準

「1年分の保険料を先に払ったけど、全部今期の経費でいいの?」「年度末に残った在庫はどうするの?」――決算が近づくと、こうしたご質問が増えます。お金を払った・受け取った時期と、サービスや商品の「対象期間」がずれる取引は、決算で整理が必要です。この記事では、期をまたぐ取引の考え方と、よく出てくる処理をまとめます。

  • 「発生主義」の考え方と、決算整理が必要な理由
  • 前払費用・前受金・未払費用・未収収益の処理
  • 棚卸資産と、工事の収益の計上時期

01ACCRUAL BASIS発生主義の考え方

会計では、お金の出入りではなく「その期に発生したかどうか」で収益と費用を計上します。

現金主義
  • お金を受け取った・払ったときに計上
  • 分かりやすいが、期ごとの儲けがゆがむ
  • 一部の小規模な個人事業主のみ、届出により選択できる
発生主義
  • サービスを提供した・受けたときに計上
  • 入金や支払の時期とは切り離して考える
  • 会社や多くの個人事業主の原則

たとえば、3月決算の会社が1月に「1年分の家賃」を払った場合、今期に対応するのは1〜3月の3か月分だけです。残りの9か月分は来期の費用になります。

1月1年分を支払1月〜12月分の家賃
1〜3月今期の費用3か月分を経費に
3月末決算残りを「前払費用」に
4〜12月来期の費用9か月分を来期の経費に

「いつ払ったか」ではなく「いつの分か」で考えるのが、期をまたぐ取引の基本です。

02PREPAID & ADVANCES前払費用と前受金

来期の分を先に払ったら「前払費用」、来期の分を先に受け取ったら「前受金」です。

前払費用(資産)

家賃・保険料・リース料などを、来期の分まで先に払ったとき。来期分は今期の経費にせず、資産として繰り越します。

前受金(負債)

商品の引き渡しやサービスの提供の前に、代金を先に受け取ったとき。提供が済むまでは売上にせず、負債として扱います。

取引今期の処理来期の処理
来期分の家賃を先払い前払費用(資産)に計上地代家賃(費用)に振り替え
来期納品の代金を先に受領前受金(負債)に計上納品時に売上に振り替え

短期前払費用の特例

税務では、一定の条件を満たす前払費用は、支払った期の経費にできる取扱い(短期前払費用の特例)があります。

1年以内のサービス

支払った日から1年以内に提供を受けるサービスの対価であること。

毎年同じ処理を続ける

毎期、継続して支払った期の経費にしていること。

一定のサービスが対象

家賃・保険料など、時の経過に応じて受け続けるサービスが対象。物品の購入や、単なる前渡しは対象外です。

※適用できるかは、契約の内容や金額の重要性などによって判断されます。節税目的だけの一時的な前払いは認められないことがあるため、事前にご相談ください。

03ACCRUALS未払費用と未収収益

今期の分なのに、まだ払っていない・受け取っていないものも、今期に計上します。

未払費用(負債)
  • 今期に使ったが、支払いは来期のもの
  • 例:3月分の水道光熱費を4月に支払う
  • 例:借入金の利息で、今期分が未払いのもの
未収収益(資産)
  • 今期に提供したが、入金は来期のもの
  • 例:貸付金の利息で、今期分が未入金
  • 例:期間で受け取る賃貸料の今期分

※実務では、締め日が決まっている請求書払いの経費は「未払金」、継続してサービスを受けている利息・家賃などの未払い分は「未払費用」と使い分けることが一般的です。

「今期の分なのに帳簿に載っていない経費」がないかを確認すると、経費の計上漏れを防げます。

04INVENTORY棚卸資産(在庫)の処理

期末に売れ残った商品や材料は「棚卸資産」として、今期の経費から外します。

STEP 1期末に在庫を数える

期末日(またはその前後)に、商品・製品・材料などの数量を実際に数えます(実地棚卸)。

STEP 2金額を計算する

数量に単価をかけて、在庫の金額を出します。単価の計算方法は、届け出た方法(届出がなければ法定の方法)によります。

STEP 3売上原価を計算する

「期首在庫+当期仕入−期末在庫」で、今期に売れた分の原価(売上原価)を計算します。

金額の例
期首の在庫100万円
今期の仕入800万円
期末の在庫150万円
売上原価(100+800−150)750万円
在庫の数え漏れ

期末在庫を少なく数えると、原価が増えて利益が小さくなります。税務調査でもよく確認される項目です。

記録を残す

棚卸表(品名・数量・単価・金額)を作り、帳簿とあわせて保存しておきましょう。

05CONSTRUCTION工事の収益はいつ計上する?

工事などの長期の契約は、完成時にまとめて計上する方法と、進み具合に応じて計上する方法があります。

工事完成基準
  • 工事が完成し、引き渡したときに売上を計上
  • 計算はシンプル
  • 完成前は「未成工事支出金」などで原価を繰り越す
工事進行基準
  • 工事の進み具合(進捗度)に応じて、毎期売上を計上
  • 期ごとの業績が実態に近くなる
  • 見積りの精度と管理の手間が必要

会計では「収益認識に関する会計基準」により、一定の期間にわたって進む工事は、進捗度に応じて収益を計上する考え方が基本になっています。ただし、中小企業は従来どおりの会計処理を続けることも認められています。

税務の取扱い

法人税では、工期や請負金額が一定以上の大規模な長期工事は、工事進行基準が強制されます。それ以外の工事は、選択によることができます。

まずは契約を確認

工期・金額・引き渡しの条件によって、使える方法が変わります。決算前に、期をまたぐ工事を一覧にしておきましょう。

どの方法をとるかは、毎期同じ方法を続けることが大切です。建設業で期をまたぐ工事がある場合は、早めにご相談ください。

06CHECKLIST決算整理のチェックリスト

決算前に、次の項目を一つずつ確認しておくと、計上漏れや二重計上を防げます。

前払費用

家賃・保険料・リース料などで、来期分を先に払っていないか。

前受金

まだ提供していない商品・サービスの代金を、売上にしていないか。

未払・未収

今期分の経費や利息で、まだ帳簿に載っていないものはないか。

棚卸

期末在庫を数え、棚卸表を作ったか。

期をまたぐ工事

未完成の工事の原価や、進捗度に応じた売上の計上を確認したか。

売上の締め

期末までに納品・提供した分の売上を、すべて計上したか。

当事務所では、クラウド会計で日々の数字を共有し、決算前に一緒にチェックします。専用LINEなら土日祝も24時間以内にお返事します。

この記事のまとめ
  • 会計は「いつ払ったか」ではなく「いつの分か」で考える発生主義が原則
  • 来期分の前払いは「前払費用」、先に受け取った代金は「前受金」として繰り越す
  • 今期分の未払い・未収も、今期の費用・収益として計上する
  • 期末在庫は棚卸で数えて売上原価を計算し、期をまたぐ工事は計上方法を確認する

Q&AFAQよくあるご質問

Q1年分の保険料を払いました。全額今期の経費にできますか?
A

原則は今期分だけが経費で、来期分は前払費用になります。ただし、支払日から1年以内に提供を受けるサービスで、毎期継続して同じ処理をしているなど一定の条件を満たせば、支払った期の経費にできる場合があります。

Q在庫が少ない業種でも、棚卸は必要ですか?
A

期末に商品・材料などが残っていれば、金額が小さくても棚卸が必要です。在庫がほとんどない場合も、確認した記録を残しておくと安心です。

Q個人事業主にも前払費用や未払費用の処理は必要ですか?
A

青色申告で複式簿記をつけている場合は、法人と同じく発生主義で処理するのが原則です。

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※本記事は2026年10月時点の一般的な内容です。個別のご判断は、お気軽にご相談ください。

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